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言葉は人を殺す

2015/12/05
──なんか物凄く物騒なタイトルになっちゃったのですが…お時間ありましたら、お付き合いくださいm(__)m


昔見た何かの番組で、今も忘れられないものがあります。
バラエティか何かの中のワンコーナーで、再現ドラマだったと思うのですが…(ちょっと記憶が曖昧です)
アルコール依存症で苦しんでいる男の人が、医者からもついにドクターストップをかけられるに至り、一念発起して仕事を辞めて通院しつつ、自宅で療養していました。
苦労の末にやっと回復に向かい、飲酒もしないで済むようにまでなり、ご家族も安堵していました。
そんなある日、自宅の近くを散歩していたら、ばったりと会った近所のおばさんに声をかけられたのです。

「あら。お散歩ですか?いいわねえ、昼間っから。」

このおばさんの言葉で、その人は激しく動揺してしまいます。
自宅に戻ってすぐ酒を飲み、それをきっかけにまた飲酒するようになってしまいました。
そしてついには大動脈破裂で亡くなってしまったのです。


これを見た時、私の中に少なからずとも衝撃がありました。
彼の直接の死因は、自暴自棄になって飲み続けた酒にあるけれども、それを導くことになったきっかけは、あのおばさんのたった一言なのです。
彼女は多分、それがきっかけとなって彼が亡くなったことなど全く知らないでしょう。
その後も嫌味っぽい言葉を周りに吐き散らかしながら安穏と暮らしているのかもしれません。
私はその時、今更ながら「人は言葉で人を殺すことが出来るんだ」と改めて思い知らされたのです。

私自身、うつになってからは他人の何気ない一言で深く傷つき落ち込んで、時には死を考えたこともありました。
通常の状態でいれば、何のことはない、軽く受け流せる一言に過ぎないのかもしれません。けれどもうつの場合は全ての感覚が鋭敏になっていて、心が揺らぐとすぐさまネガティブの闇に転落するようなところがあるので、油断は出来ないのです。


会社を辞めることになる直前、私はやっとの思いで出社していました。
「ここで頑張れば道は開ける」「今が苦しいだけだ。もうすぐ乗り越えられる」「辞める訳にはいかないんだから」と自分で自分を叱咤し、眠れない夜を過ごしたまま迎えた朝、ベッドから身体を引きはがすようにして、毎朝通勤電車に乗り込んでいました。
化粧もする気がなくなったのでマスクで誤魔化し、髪は無造作に束ねるのみ。お弁当なんかもちろん作ることもできず、昼は社食で定食の殆どを残し、夜は食べずに飲酒するという食生活。
けれども仕事は思うようにこなすことが出来ず、ますますミスが目立ち周りに迷惑をかけ、私は何のために毎日這うようにして出社してるんだろうと心のどこかで思い始めた頃でした。
上司の女性にこう言われたのです。

「──病んでるねえ」

苦笑混じりのその言葉は、私に衝撃をあたえるのに充分でした。

「あなたが調子悪いのはもう誰が見たってわかるからさあ~。もういいよ。」

──だから、もういいのよ、毎日毎日そうやって病人ですって顔、してなくても──
─無理に会社、来なくても──


続けられた彼女の言葉に、私はそうしたニュアンスを感じ取ってしまったのです。

気分屋で気の強いその上司の女性は、普段からこうした言動の多い人でした。
でも今までは受け流せていたはずです。
彼女は自分の気に入った部下は大事に守るけれど、そうでない部下には必要以上に激しく叱咤することが多いことで有名でした。それでみんな辞めてしまいます。
そうすると、次に新しいターゲットとなる部下が決まるのです。
(こんな、ドラマの中だけのような上司ってほんとに実在してるのです!)
どうやらその時のターゲットは私であったらしく、間の悪いことにミスも増えだしたので、私は何度も島中がシンとなるような調子で叱咤されました。あとで同僚に同情されたくらいです。(これを私たちは『公開処刑』と呼んでいた。(笑))

きっと、これみよがしにふらふらと幽霊のような顔をして毎朝出社し、隣でおどおどトロトロと仕事をしている私が彼女はウザくて仕方がなかったのかもしれません。

私は頭の中が真っ白になってしまい、同時に深い絶望感に包み込まれて帰宅しました。
彼女に言われた言葉を何度も脳が反芻します。

どうして元のように仕事がこなせないのだろう。
どうして要領が悪くなってしまったんだろう。
どうしてこんなことぐらいでへこんでしまうんだろう。
みんなきっと、ウザいと思ってるんだ。
駄目な私。弱い私。

泣きながらその夜私は、マンションのベランダから首を伸ばして下を覗き込んだりしていました。

──下には植え込みがあって、あれがクッションになってしまったら助かってしまうかもしれない。
──そもそも5階から飛び降りて、ちゃんと死ねるだろうか。

そんなことを考えては部屋に戻り、またすぐにベランダに出て下を覗き込んだりを繰り返したりしていたのです。
飲んでいたし、今思うとあの時が一番危なかった瞬間でした。


以前の私は、何の躊躇もなく思ったことをすぐ言葉に乗せてしまう人間でした。
それで壊れてしまった関係がいくつかあります。

例えば職場で皆が仕事上のことで迷惑している人がいて、その人のいないところで皆で顔を突き合わせひそひそ言っているのに、決して本人には指摘しない…そういうのが嫌いな人間でした。
なので、そういう場合、私はよく本人に指摘したりしていました。
そんな私に皆は「言いにくいことを言ってくれてありがとう」「悪者にさせちゃってごめんね」などと言うのです。
皆は、誰かがそうしてくれるのを待っていたようなところがありました。
「そうか、私は悪者なのか」と少し嫌な気持ちになったと同時に、「言いたいなら言えばいいのに」と内心憤慨していた私ですが、果たして言われた方はどうだったのだろうと今になっては思うのです。
あの時自分がどういった言葉でその人に指摘したのか、もう今は思い出せません。


うつになってからは、他人が悪気もなく無意識に放つ言葉がどんなに自分を落ち込みのどん底へと誘うのかを嫌と言うほど知りました。それが引き金になり、本当に命を絶ってしまった人もきっと少なくありません。
今でも、自分がストレスになって苦しんでいるくらいなら言うべきことは言った方がいい…という考えを崩せない私ですが、私が無造作に相手に放ってきた言葉の中には、相手を死ぬほど苦しめた一言があったのではないか…と今更ながらに思うようになりました。

言葉は、相手から暖かい気持ち、生きる原動力を受け取ることができるものです。
そしてきっと自分も相手に渡すことができるものだと思うのです。
けれどもその反面、相手を死に至らしめることさえも可能になるものなのだと、しみじみ思う今日この頃です。


──なんか暗くなってしまった。
落ち気味の時に、一番辛かったころを回顧するのって良くないですね……。





無言でただ生きるのにだけ一生懸命★

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22:23 うつになって感じたこと | コメント(2)
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